やまとの羽根 第1巻(咲香里/講談社(アッパーズKC)

(この文章は12/13に若干補記しました)

超本格的バドミントン漫画、と銘打たれてヤングマガジンアッパーズで連載スタートした漫画。
ストーリーは以下のような感じ。

鳥羽大和はサッカー部所属の中学1年生。双子の妹の撫子にバドミントンの練習に嫌々付き合わされる日々を送っていた。そんなある日、バドミントン界の若き天才、沢本翔に偶然出会い、成り行きで大和はバドミントンの試合をすることになるが、手も足も出ずに敗北してしまう。
翔は大和に言う。「バドミントンにまぐれは無い。実力のある方が必ず勝つんだ」
後に翔の素性と経歴を知った大和は、バドミントンにのめり込むようになるのだった。沢本翔と試合をするために・・・!

というわけで、ライバルキャラにガツンとやられて嵌っていくところとか、実にスポ根モノの王道を行く作品なのです。・・・なのですが、第1巻を読む限り、さっぱり熱血しません。それは全て、お話の展開の所為ですが。

第1話で『沢本翔』に完敗した『鳥羽大和』は、妹から『沢本翔』が小学生時代に無敵を誇った程のエリート選手であることを教えられる。『鳥羽大和』はそれを期に本格的なバドミントンの練習をはじめるようになるのだが、その動機は熱血スポ根によくある「あいつに負けるもんか!」という強烈な負けず嫌いからではない。ただ「バドミントンが面白い」と感じ、「もっと巧くなって『沢本翔』と試合がしたい」という願望からだ。そして彼は、好きだったサッカー部を辞め、女子しかいないバドミントン部に入部。部活動以外でも妹を巻き込んで特訓を始める。ええもう、サッカー少年が全く迷わずにバトミントンに方向転換ですよ。
第1巻のほとんどが、そんなひたむきな大和少年のひたむきな特訓っぷりが描かれています。まぁ、練習ばっかで話が盛り上がるわけは無く。(一応、秘めた才能を感じさせたり、第1巻の最後の方では最初のコーチとの出会いっぽいものがあったりしますが)

ですが、主人公『鳥羽大和』のキャラクターは、実に魅力的です。
好きだったはずのサッカーをスパッと切り捨てる潔さ。
己から進んでストイックなまでに練習を繰り返し、そしてバドミントンをどんどん好きになる少年。
格好良いじゃないですか。
そして、目的の為にやるべき事を迷わず実行に移す、その意志の強さと実行力。
すばらしい! 僕はこのキャラが大好きさ!

作者である咲香里は、この数年は「春よ来い」という恋愛漫画を書いていて、それ以前は成年誌向け作品を書いている方です。少年漫画、というかスポーツを題材にした漫画は経験がありません。故に少年漫画的にスタートしたにも関わらず、それらしくない展開になっているのかと思います。反面、キャラクター作りはベテラン作家らしい良い感じかと思います。
これから先、どうお話を作っていくのか。少年漫画的な熱血スポ根になるのか? それとも作者の持ち味を生かした新たなスポーツ漫画を作っていくのか?
注目したいところです。

ところで、もしこの作品の主人公が『大和』でなく妹の『撫子』なら今よりも人気がでると思うのだが、どうだろうか?