id:cider_kondoさんへのお答え

スターシップ・オペレーターズ 第9話『ターニング・ポイント』

「唐突で説得力に欠ける」というのは一理あります。自分が思うところでは、「充分な伏線を張られる前に、またキャラクターに感情移入させられる前に物語の転機が訪れている」ということです。
まず、直前の第8話までで「納得いかーん!」と感じることは何度かありました。その最たるものは第1話での戦いを始める経緯の描かれ方。絶望的な戦いを始めるにしてはサクッと決められた感じだし。他には第3話でクルーが戦いを辞めるのを思い止まるイベントとかもそう。「恋の為に船に残った」サンリというキャラを描く話としては良かったと思うけれど、それでクルー全体の暴発を防げたのはどうにも理解しがたかった。
そして第2話以降では、ほとんどの主要キャラのキャラ立てが為される前にクルーの死亡等の重要イベントが描かれていった為、物語に入り込みにくく(つまりは感情移入しにくく)感じました。第5〜6話『グレート・エスケープ』なんかが特にそんな感じで、それぞれのキャラがどういう奴なのかほとんど判らないまま3組に分かれての「脱出劇」とか「恋愛劇」とか「友情劇」とか、割と見ていて辛かったです。

で、今回の第9話ですが。やっぱり唐突な展開だったとは思います。今まで全く描かれていなかった王国の政治闘争が急に描かれたりしたわけですから。
それでも今回が面白いと考えられたのは、王国内の政治闘争がトップが死んだ後での“秘書官 対 報道官 ”のみというシンプルな図式をその間にいる将軍視点で描かれたり、主人公の悩み「何の為に戦っているのか?」は 視聴者にも判らない という実にもっともなものだったりして、今までの話を無しにしても(これまでの流れを脳内補完できるほどに)分かりやすく飲み込みやすかったドラマだったというのが一つ。
あと、第9話においてアマテラス側で描かれたのが主人公の香月シノンの物語に絞ったことも良かったと思います。その為に話の構造をシンプルに描けた。
これまでは様々なキャラが並行して描かれている為に、どちらかというと群像劇のような印象を与えられていました。今回は主人公以外のアマテラスクルーをあくまでシノンの理解の外にいる“他者”としてのみ扱うことでシノンの戸惑いや不安等を巧く描けていたと思います。だからこそラストで機関長と結ばれても違和感無く受け入れられたのでしょう。

物語に説得力があるか(またはあるかのように思わせる、あるいは気にさせない)の分岐の一つには「キャラクターに感情移入できるか」があります。もしもアマテラスクルーの個性をもっと描かれる話があれば、また王国側のキャラが政治的駆け引きも含めてもっと前面に出ていれば、今までの話は(同じように描かれていたとしても)より面白く感じられたでしょう。その為には結局あと10話位そういう話が見たかったなぁ、と思うのでした。